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「オンリー・ゴッド」(2013) [映画・テレビ]

なんというか…濃密な傑作でしたわ。
どう感想書いたら伝わるだろうと考えてたら楽しくて、あっという間に電車が降りる駅に着いてるほどに。

あらすじ的には、バンコクでムエタイジム経営してるアメリカ人の主人公とその兄。女を買いに行った兄さんは「女はこれで全部か。もっと若いのを出せ。16とか14才な!」とか言って店主や飾り窓の女性たちをボコった挙句買った少女を殺しちゃって、警官に復讐するよう強要された少女のお父さんにその場で殺されちゃう。すると今度はアメリカから兄弟のママが息子の復讐のためにやってきて、リンチの手引きをした奇妙なタイの警官と対決する…てな感じのシンプルな犬のケンカのようなストーリー。いかにもなハリウッドにエスニックな香辛料を振りかけただけみたいなファストフードがどうしてこんなに神話的で一部の隙もないスーパームービーになっているのか…。
最初は、オールバンコクロケの画面の垢抜けなくて迫力あり過ぎる色味やら、国籍年代不明の編集やらで、自分が何を見てるのかもよく分からなくらいだったんだけど。
そのうち、タイにもタランティーノみたいな才能があるんだなぁ!と失礼でトンチンカンな感心の仕方をした瞬間があったり。
出てきた瞬間、主人公の対決すべきラスボスは兄の仇でも警官でもなくコイツだ!と解ってしまう主人公の母親。息子の仇を取りに来るビッチでマッチョなママに嫌悪感を抱きつつも魅了されてたら、彼女が僕がポルノ的に大好きなポランスキーの「赤い航路」や、「ミッションインポッシブル」でトム・クルーズのチームにいたクリスティン・スコット・トーマスだとわかった時のさらなる驚き。
息子を触る時の肩や二の腕の筋肉が怖いよ。
そして、本作の主人公…ではないけど、核ではある奇妙な正義の顕現たるタイの警察官チャン役のヴィタヤ・パンスリンガム。彼は警官でありながら、正義を執行するとき背中から剣を抜いて罪に応じた罰を与える。
彼が背広からカタナを抜くたびにシュッリーイィン…ッ!とやり過ぎ過ぎる音が鳴る。
正義がなされるたびにチャンは警官しかいない店で長々カラオケを歌う。一作品中で三度歌う場面がある54歳のおじさん。とても奇妙!
絶賛もある一方で「なぜこの映画が笑い飛ばされないのか理解出来ない」と書かれるのはこの辺だと思うんですが…僕には、作品世界の秩序を守る彼の姿が、死後も食い合い殺し合いを永遠に続ける罪人をさばき続ける地獄の番犬ケルベロスにも見えてしまうほどだったんですが。
そんな僕でも、彼が直立不動でカラオケで三曲目を歌い上げてる瞬間映画が終わったのにはさすがにびっくり「えぇーッ!!なんだってーッ!?」と思ったりもしましたが、振り返るともうあれ以外の正解とか浮かばない…。__0265.jpg

警察官チャン役のヴィタヤ・パンスリンガムさんは心情の窺い知れない味わい深い顔のおじさんなんですが…日本で言えばどなたでしょう。
例えばこの方とか?
__0264.jpg

六平さんが襟のとんがったシャツの黒スーツの背中からカタナを抜いては悪を斬り、その度にカラオケで歌う…なのに誰も笑い出さずに映画に魅了されてしまう状況を想像すれば監督の演出力の素晴らしさが僕にもわかるような気がします。
この監督さんが、例えば、例えばですよ?
詰襟学生服姿の潜入捜査員六平直政さんが警察官の身分を明かし、その権力に比例して巨大な警察手帳を取り出して見せるというシーンを演出すると、場内は衝撃と期待で張り詰めてしまい、脚本が意図した失笑の小芝居を実現できないのではないかと不安になってしまう豪腕。

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もんそん

めちゃめちゃ 濃密でしたよね。
そして怪しさも相当なもの。

ママがリアルな世界で物語をグイグイ引っ張っていきつつも、主人公とチャンは神話の世界にいる感じでしたねー。

否定派が多いのは仕方ないつくりですが、僕はとても好きな映画でした。
しかしながら、これを家でDVD鑑賞していたら自分はどんな反応をしていたのだろうか。完全に劇場で観るべきタイプの映画でしたね。
by もんそん (2014-01-30 01:39) 

inuneko

もんそんさま、コメントありがとうございます。
今思い出しても、おいしかったすなー。
ほんとに大ご馳走いただいた気分です。でかいファミレスチェーンに入らなくて良かった…。
でもこういうものを見てしまった時って劇場で他のお客さんに話しかけたくなって困りませんか?(笑)
by inuneko (2014-01-30 02:38) 

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